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SaaS Playbookカスタマーサクセス編

自社のプロダクト、サービスを通して顧客の成功、成長を導く。そこから顧客満足度の向上を実現し、自社のサービス継続率を高め、ひいてはアップセル・クロスセルへのアシストをすることによって、自社の成長にも繋がる......

こうやって文字にしてみると、カスタマーサクセスの仕事は、“三方良し”の素晴らしい価値を提供する仕事と言えるでしょう。まさにSaaSモデルにおける「コア」とも呼べる、そんな職種でもあります。

このページは、カスタマーサクセスに従事する皆さんにとっての、いわば教科書となることを目的として構成されました。

カスタマーサクセスとしての一歩を踏み出した方はもちろん、メンバーとしてお客さまと向き合う方、現場を統率するマネージャーの方、そして部門間で連携するマーケティング、セールスの責任者向けなど、さまざまな立場にわけたトピックを用意しました。

カスタマーサクセスが今、注目される背景からビジネスモデルや営業スタイルの変化についてはもちろんのこと、仕事の現場で使えるノウハウまで。最後には、カスタマーサクセスと他部門との部門間連携によるシナジーをいかに生み出すのかなど、明日つかえるテーマから未来の話まで、あらゆるトピックを網羅しています。ぜひ社内でご活用ください。

カスタマーサクセス担当者向け
日々、お客さまと向き合う方々へ

改めて、カスタマーサクセスとは何か

改めて、カスタマーサクセスとは何か。

直訳の通り、「顧客の成功」を導く役割を担っており、能動的に顧客に働きかけながら、自社が提供しているサービスを通して成功体験へつなげていくことを指します。

カスタマーサクセスが急激に言葉として普及した背景にあるのは、「SaaS市場の高まり」と「業務のDX化」です。

皆さんの会社においても、例えばSlackやChatwork、Zoomといったサービスを少なからず利用しているかと思います。昨今ではMicrosoftやGoogle、そしてリクルートの収益基盤としてSaaS/クラウドビジネスがそのウエイトを高めており、会社のメールやカレンダーのシステムも今やSaaSが主流となっています。

加えて、カスタマーサクセスがなぜ近年必要とされるようになったのか。ビジネスモデルの変化や近代的な産業の定着といった時代背景を踏まえてウォッチしてみましょう

また、ALL STAR SAAS FUNDのアドバイザーであり、支援先のメンターでもある、山田ひさのりさんに、カスタマーサクセスの仕事の魅力なども伺っていますので、ぜひこちらもチェックください。

Podcast版もどうぞ。

オンボーディングと顧客のライフサイクルを知る

SaaSビジネスにおいて、顧客との長期的な関係性を築き、プロダクトの価値を最大化させる役割を担うカスタマーサクセス。

自社のSaaS事業の成長の鍵を握るのは、顧客との良好な関係を築き続けるカスタマーサクセスに他なりません。ただ、ともすれば属人的になりすぎる仕事、しっかりと組織化していくためには、戦略や目標設計の観点が欠かせないでしょう。

ここでは、実はまだ整備されていないオンボーディングについての切り分けについてお話しをさせていただきます。

カスタマーサクセスの業務の中で、「オンボーディング」という言葉を聞かない日はないのではないでしょうか?

オンボーディングという言葉は、本来は人事用語で、新しく入社した社員が早期に立ち上がり、活躍し定着してもらうための施策やプロセスのことを指します。一方、カスタマーサクセスの現場においては、顧客の成功を導くための施策の一つとして、顧客に対する自社サービスの導入サポートをする施策として使われることがほとんどでしょう。

このオンボーディングにも3つの種類があります。そして顧客セグメントによってオンボーディングの中身も変わってきます。以下はSansanの顧客セグメントの区切り方を示した図です。

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ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチという言葉は一度は聞いたことがあると思いますが、これらの区切り方は「従業員規模」が一般的です。

そしてもう1つ重要な要素が、顧客のライフサイクルです。

顧客ライフサイクルとは、お客さまのジャーニー、要は自社とお客さまとの最初の接触からその関係性が継続する限りの期間のことです。基本は「オンボーディング期」と「サクセス(アダプション)期」に分けて考えられます。

SaaSは年間更新のケースが多いと思いますが、全体の流れとしては、オーダー、契約、オンボーディング、サクセス・アダプション、リニューアルと進み、その後はサクセス・アダプションとリニューアルが交互に年単位で訪れます。

お客さまは、あなたの会社の製品・サービスを導入することで、何かしらのポジティブな成果が生まれることを求めています。そのためにカスタマーサクセスとして伴走し、文字通りお客さまの成功へと導くわけですが、まさにサクセスが生まれなければ、契約更新を得るには難しいでしょう。

ここでは、日本におけるSaaSの第一人者的企業であり、日本を代表する企業でもあるSansanの事例を紹介します。導入件数が約170件までは、創業メンバー全員でCSの導入支援や利用促進に従事し、メンバー数も15人程度とスタートアップのアーリーフェーズにとって参考となる事例です。なお、紹介している記事の中でライトサクセスとディープサクセスという言葉が出てきますが、それについては次の章にて改めて解説します。

ライトサクセスとディープサクセスを知る

皆さんは、「ライトサクセス」と「ディープサクセス」という観点をご存じでしょうか。

前提として国内外のSaaSやカスタマーサクセス界隈において一般的なものではありません。

しかし、Sansanでカスタマーサクセスの戦略立案に携わってきた山田ひさのりさんの経験から、プロダクトによって「サクセスのしやすさ」に差があることに気づき、ライトとディープの2つにサクセスを分類したと話しています。

より詳しく説明すると、自社のプロダクトがサクセスさせるべき顧客内部にレイヤーが存在していること、プロダクトの浸透が進むにつれ、そのレイヤーが広がっていくこと。さらには、プロダクトが進化する方向性を考えることと、サクセスさせるレイヤーを明確にすることに、深い繋がりがあること。その中でライトサクセスとディープサクセスという観点にたどり着きました。

「ライトサクセス」とは、業務課題を解決するサクセスのことで、顧客がQuick Winを繰り返し、結果として現場が満足するサクセスを実現できた状態を指します。

「ディープサクセス」とは、経営課題を解決するサクセスで、提供するプロダクトが業務の現場に完全に定着し、経営層が満足するサクセスを実現できた状態を指します。

いずれ、カスタマーサクセスチームのリーダーやマネージャーとなり、チームをリードしていく方はもちろん、サクセスに課題を感じている方にぜひ読んでいただきたい記事です。

リニューアルマネジメントについて

「リニューアルマネジメント」とは、顧客が契約を更新する(リニューアル)前に接触する活動を指します。

リニューアルマネジメントは一定の工数がかかる上に、SaaSにおいては年間の自動更新を前提としているところが多いので、一見すると無意味な活動に思えるかもしれません。しかし、実はお客さまの更新意思を確認する以外にも、やるべきことはたくさんあります。

そもそも、なぜお客さまが自社のプロダクトを導入したのかという導入意思の再確認からはじまり、プロダクトの利用状況の確認、ROIの確認、決裁ラインの再確認からVoc(ボイスオブカスタマー)の収集......そしてエクスパンションの可能性があるか否かなど、改めて自社のプロダクトが貢献しているのか、提供価値の最大化などを確認することが可能です。

チャーンを防ぐためにも、そして自社のMRR、ARRを最大化するための良い機会と言えるでしょう。

ここでは、リニューアルマネジメントでやるべきこととスケジュールを細かくまとめていますので、自社プロダクトの進化、事業成長のためにぜひ取り組んでみてください。

カスタマーサクセスがエクスパンション、プライシングにもタッチすべき未来

併せて、上記の記事を読んだ方であれば、そこで言及されているエクスパンションについても解説していきましょう。

これまで、収益を最大化させる手法は「新規顧客の獲得(Go-To-Market)」が有効とされてきました。その潮流は変わっていませんが、事業歴5年以上のSaaSベンダーの中には、エクスパンション(アップセル/クロスセル)で事業拡大を目指す動きが顕著になっています。

顧客のサクセスによって、提供しているプロダクトへの信頼が向上し、追加受注に繋がるケースや、販売できるプロダクトが増えたことで、既存顧客にも案内できる機会ができたなど、SaaSベンダーが取り得る課題解決策となるからです。

一方で、新規顧客の獲得に一辺倒であったSaaSベンダーは、未だ明確なエクスパンション戦略を持てていないケースもあります。この記事ではSaaSにおけるエクスパンション戦略、中でも主にカスタマーサクセスドリブンで実現する方法について考察しています。

B2Bカスタマーサクセスの重要な責務と言えば、お客様の社内で自社製品の利用を促し、定着させ、チャーンされないことです。しかし、最近のスタートアップCSはNet Dollar Retention(NDR)をKPIにしているところもあり、Expansion(Exp.)をストレッチさせることで事業貢献しようとするケースも多く見られます。

ただ、Exp.ストレッチの相談でよくあるのが、そのプロダクトのプライシングが練り込まれておらず、追加課金を促す余地がないことです。昨今、SaaSのプライシングについてはいろんな方が情報発信されており、米国の西海岸で培われたプライシング研究のサマリーなども時折目にします。

今回の記事は「適切なプライシングとは?」というトーンではなく、カスタマーサクセスの視点から考えてみたいと思います。

カスタマーサクセスに従事して身に付くスキル、キャリアの可能性は

カスタマーサクセスという職業が定着したのは、ここ5年以内のこと。今後はカスタマーサクセスがより必要なポジションになるのか、世の中がカスタマーサクセスを求めるニーズ、カスタマーサクセスとして携わることがどういったキャリアを築くのか、気になる方も少なくないでしょう。

新しい職種であるがゆえに、カスタマーサクセスとしてキャリアを積んでいるロールモデルの方にはどんな方がいるのか
カスタマーサクセスという仕事を経験した先に、どんなキャリアパスが開けるのだろうか

ここではCS未経験からスタートアップの1人目カスタマーサクセスに従事しているログラスの矢納さんのインタビューをご覧ください。ログラスへは「5人目の社員」として入社し、同社のCS組織の立ち上げから担い、現在もチームを率いています。

SaaS事業の成長を加速させる超実践的ノウハウを配信

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カスタマーサクセスチームのKGIとKPIを考える

SaaS事業成長の鍵を握るのは、顧客との良好な関係を築き続けるカスタマーサクセス(CS)に他なりません。ともすれば属人的になりすぎる仕事を、しっかりと組織化していくためには、戦略や目標設計の観点が欠かせないでしょう。

CSを組織化する上での必須知識を、下記5つのテーマに分けられると思います。

  1. CS組織化のポイントとKPI・KGI設計
  2. CSMの基本マインドとオンボーディング
  3. リニューアルマネジメントとエクスパンション
  4. ヘルススコアとデータ基盤
  5. カスタマーマーケティングとコミュニティ

2のオンボーディングと3のリニューアルマネジメントについては、カスタマーサクセス担当者向けのパートで解説していますので、そちらをご覧ください。ここでは1、4、5についてそれぞれ解説していきます。

CS部門の位置付けは、B2BとB2Cで異なるケースが多いからです。CS部門は営業とCSが連携する「営業近接型」と、エンジニアとCSが連携する「プロダクト近接型」に分かれ、営業近接型がB2B、プロダクト近接型がB2Cになりやすい傾向にあります。

話を戻して、このページで何度も登場しているSansanのカスタマーサクセスの場合、「月次解約率」と「月次更新解約率」の二つをKPIとして活用しています。

「月次解約率」は、一般的にチャーンレートと言われるもので、分母に「前月末のMRR総額」を置くということは、新規獲得の影響を受けるわけです。一方の「月次更新解約率」は更新対象月の顧客のみを分母に据えているのが違いです。その点では「更新率」と言い換えてもいいでしょう。

チャーンレートについても、見方によってその中身が変わることもありますので、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

各事業フェーズで押さえておくべき、CSの注力ポイント

CS組織をどのように成長させ、各フェーズでどのような点に注意しなければならないか。PMFを境にCS組織は拡大の一途をたどります。

会社全体の状況が変わる中、注力すべきポイントをどう変えていくべきか。逆に事業サイドがCSに求める要素はどう変わっていくのか。

「良いCS組織の定義とは」「CS組織を成長させる5ステップ」「適切な組織拡大のプランとは」

これらの情報すべてを、山田さんが丁寧に解説してくれています。

CSのパフォーマンスを計測するための「CSメトリック」と、その活用法

「ノーススターメトリック」という言葉をご存知でしょうか?

これは、プロダクトや事業全体で追い求めるべきKPIを全社で決める試みのことで、まるで北極星のように目指すべき目標を示してくれるものです。

これをCSの観点で考えると、CSメトリックがその役割を果たしてくれます。CSメトリックは、プロダクトが健全に利用されていることを示す指標で、プロダクト提供価値の伝達量と言い換えられます。この指標はチャーンの先行指標としても活用できます。

価値伝達量が最大になっているということは、お客さまがプロダクトやサービスの価値を十分に感じているということ。ビジネス成果が出ていない場合でも、価値伝達量が最大化されれば、ビジネス成果が自然と出るように設計されているプロダクトは多いので、プロダクト価値の伝達量を最大化するのは、そもそも絶対的に良いことだと山田さんは語ります。

チャーンの先行指標にもなるこの指標についての導入メリットなどをここでは紹介しています。SansanにCSメトリックを当てはめて考える、わかりやすい例もありますので是非、参考にしてみてください。

ヘルススコアをどう定義するか

お客さまが自社商材を継続して使い続けてくれるかどうかをスコア化(数値化)し、向上させ、チャーンを防ぐ上で用いられている、ヘルススコアという考え方ではありますが、ここで一つ疑問が生まれます。

「一般的に考えて、サクセスしているお客さまがチャーンする可能性は、概ね少ないはずです」

しかし、「チャーンの可能性が低い=サクセスしている」ではありません。このあたりを混ぜてしまうと、ヘルススコアはいったい何を測るためのものなのかが、よくわからなくなってしまいます。

たとえば、ヘルススコアを「チャーン予備軍の洗い出し」を目的に作った場合には一致しないことがほとんどです。作った目的と異なる用途で解釈して、用いてはヘルススコアは機能しません。ヘルススコアは万能のものさしではありません。

山田ひさのりさんはヘルススコアの責務を以下のように提唱しています。

「ヘルススコアは顧客の健康状態を把握できる数字なので、上手く使えばチャーン予備軍を洗い出すことができる」と。

また、山田さんはこう続けます、

「ヘルススコアは通貨と似ている。大切なのは「継続率との関連性」があるという前提で作ること」

そこでここではSansanの事例をもとに、ヘルススコアの振り返りに大事なデータソース、そしてスコアの概要について参考として紹介しています。このサンプルをもとに、自社プロダクトのヘルススコアの設計にトライしてみてください。

BtoB SaaSで「ROI」を特定する意義とその方法

サービスの提供価値をいかなる指標で計り、顧客のチャーンを防ぐのか。その一つの基準に「ROI(費用対効果)」が挙げられます。

提供するサービスによって顧客にROIを与えること、それこそがカスタマーサクセスにおける「サクセス」に他なりません。

しかし、カスタマーサクセスとして、プロダクトやサービスがもたらす「売上増」や「コスト減」をROIとして算出しようとしても、うまくいかないことが多いでしょう。ROI特定こそ、カスタマーサクセスのマネージャーにとって、最も手腕が問われるところ、と言えるかもしれません。

では、いったい何がROIとして設定できる要素になるのか。そしてどのように測られるべきなのか。ROIを特定するための具体的なステップと共にこの記事で解説しています。

SaaSスタートアップが語る、CSの立ち上げで「やってよかった」3つの取り組み

CS組織の体系化やノウハウの吸収はできたものの、「自社に活かすために、より身近な実践例や具体例を知りたい!」という声も寄せられました。

そこで山田ひさのりさんに加え、実際CS組織を立ち上げ、推進しているスタートアップ企業2社より、現役CSとして活躍している2名を加え、講座の「番外編」を実施しました。ゲストにお呼びしたのは、hacomonoの朝倉康之さん、ログラスの矢納弘貴さんです(所属、ポジションは取材当時のものです)。

CS組織作りの経過や、オンボーディングの変遷を聞き、その秘訣を教わりました。記事ではライトサクセスを何と定義したのか、またCSチームを立ち上げる際に「やっておいてよかった」というポイントを贅沢に開示しています。マネージャーとして、CSチームを率いる上でヒントとなる事例がいくつも紹介されているので、ぜひ参考にしてみてください。

カスタマー・アドバイザリー・ボード(CAB)をより深く知る

皆さんは、「CAB」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。カスタマー・アドバイザリー・ボード、の略でCxOレベルの経営層と直接つながる機会を設け、SaaS企業にとってカスタマーサクセスやマーケティングリサーチ、プロダクトのアイデアの創出など、さまざまな観点で重要な機能を果たしています。

日本ではまだ浸透していないものの、北米の大手SaaS企業で積極的に取り入れられており、これから重要性を増すと考えられるCAB。

ここでは180カ国以上、約7億人のユーザーがいるDropboxで米国流のCAB運用を学び、日本展開を実践された小林健吾さんを招いて、その重要性や実際の運用方法についてお話しいただきました。CABのパターンや、成功するCAB、失敗するCABなどについて言及しています。

CS戦略をドライブするカスタマーマーケティングとコミュニティ

カスタマーマーケティングとは「既存顧客に対するマーケティング活動のすべて」と、『ハーバード・ビジネス・レビュー』に置いては整理されています。ご存じの通り、「新規顧客の獲得は既存顧客からのそれよりも25倍高額である(=コストがかかる)」とよく言われています。

継続率が5%アップすると、収益は25%〜95%アップする、アメリカのSaaSにおける研究でも掲げられていますが、要は「既存顧客からの売上をもっと高めましょう」ということです。

顧客のサクセスを後押しするためのマーケティング活動と、顧客のサクセスを最大訴求ポイントとするマーケティング活動。これが補完し合ったマーケティングこそを、カスタマーサクセスマーケティングと呼べるでしょう。

良いカスタマーサクセスマーケティングのゴールへ行き着くには、CSとマーケター・マーケティングの連携が不可欠です。ここではSansanの事例を中心に、プロダクトマーケティングマネージャーの視点も交えて解説をしています。

エンタープライズ顧客のリニューアルマネジメントの要点

 
莫大な費用をかけての新規顧客獲得が難しくなった昨今、新規顧客獲得だけでなく、既存顧客の価値を最大限に引き出し、NRRを向上させることが欠かせません。
 
また、大企業のリニューアル成功事例が増えることで、その事例を他社にも応用できることから、さらなる契約の獲得も期待できます。
 

高単価顧客のアップセル、クロスセル、エクスパンション......これらを図っていくためには、どのような施策が効果的なのでしょうか。

ここでは、PMF後のフェーズにおいて、初期に獲得した大企業のリニューアルを成功させた経験をもとに、社内でユースケースを作りたいと考えるCSマネージャーやCSメンバーに向けて効率的なオペレーションとリニューアルマネジメントのメソッドを紹介します。

お客さまのサクセスと自社の収益最大化を目指す上で、国内におけるエンタープライズSaaSのトップランナーであるユーザベースグループの成功法則を見逃すことはできません。

今回は同グループからスタートアップデータベース事業「INITIAL」でCCOを務める大沢遼平さんにお話を伺いました。

カスタマーサクセスを採用する上でのポイント

カスタマーサクセスの採用はまだまだノウハウが確立されていない領域です。各フェーズごとに求められるCSの役割やスキルなどを踏まえて、ペルソナや採用候補者の広げる観点、オンボーディングのポイントなどをALL STAR SAAS FUNDのパートナーである楠田司と神前達哉で整理しています。

「CS採用の3つのハードル」
「チームはいつから編成すべきか」
「PMF前とPMF後でCSのスタンスは変わるのか」
「どのような候補者がワークするのか」
「CSに求められるスキルや業務姿勢」

などを支援先へのサポートをしているからこそ見えるカスタマーサクセスという職種で活躍する人の特徴を解説しています。

現在、CSの採用を進めているスタートアップ経営者や人事、CS責任者の方にオススメのエピソードです。

【変わるCSの役割】リセッションの兆候のなかで、カスタマーサクセスはどう変わるべきか

2023年、マーケットの市況感にも動きが出てきました。リセッション(景気後退局面)の兆候を感じるなかで、海外SaaS企業でもレイオフなどの話題が起こり、コストカットの要請がIT企業を中心に出てきています。国内外のSaaS企業で、今後もプロダクトの見直しや原価圧縮に対する働きかけが起こりうるでしょう。

はたしてこの環境下で、CS(カスタマーサクセス)はいかなる価値を発揮し、その概念を広めていくべきなのでしょうか。グローバルトレンドを踏まえた上で、日本のSaaS企業におけるCSの立ち位置について、メンターの山田ひさのりさんとディスカッション。変わりゆくカスタマーサクセスの役割について、ぜひ一度ご覧ください

プロダクト、セールス、マーケティング......
カスタマーサクセスとの理想的な連携を探る

SaaSビジネスの組織をデザインしていくために、「THE MODEL」の考え方を中心に据えるのが正攻法となってきました。ところが、部署ごとに分かれてKPIを追いかける状態において、各部門がお互いを理解し合えなければ、有機的な連携はありえません。

実際、私たちが日々、投資先の企業と日々ディスカッションする中で、この「部門間連携」についての課題をよく耳にするようになりました。「ビジネスモデルに矛盾が少なく、美しいSaaS」を志向するうえでも、部門間連携においても、よりよいあり方を考えるのは大切なことだと考えます。

そこで、SaaSのセールス、イネーブルメント、カスタマーサクセス、組織・経営のスペシャリストたちを擁するALL STAR SAAS FUND公式メンターのみなさんにご協力いただき、この「部門間連携」をテーマに語っていただくシリーズ連載の機会を設けました。

Podcastが中心となりますが、それぞれご自身の役割ごとに。また、より連携を深めたい相手部署と、どのように連携を進めたらいいのか悩んでいるなどあれば、そのエピソードをまずお聞きいただければと思います。

カスタマーサクセス×セールス

カスタマーサクセス×プロダクト

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Appendix:
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの役割を整理する

CSという略称から連想されるのは元はカスタマーサポートであり、カスタマーサクセスという仕事はこの10年ほどで台頭してきた、ということに関しては皆さまも同じ認識をお持ちかと思います。

そもそもカスタマーサクセスとカスタマーサポートの役割は、それぞれ大きく異なります。そして、いずれのポジションも必要です。強いカスタマーサポートチームがあればこそ、お客様に向き合うカスタマーサクセスチームも躍動します。ここで簡単にカスタマーサクセスとサポートの違いについて、説明します。

カスタマーサポート

カスタマーサポートは問題が発生してから対応する、言わば「守り」の役割を担います。「リアクティブ」とも言われますが、お客さんが何かしら困りごとを伝えてくれたら、それに対して反応し、迅速に正しく解決することがメインです。

ゆえに、カスタマーサポートはプロダクトを利用するためのマニュアル、ヘルプ、FAQなどを提供したり、プロダクトの不具合と思われる挙動の確認、調査、解決をしたりといったことを主な業務とします。

つまり、問題への回答がほぼ一意に決まる対応となり、誰が、どのようなことを聞いてきても、同じような答えを迅速に返せることが求められています。

カスタマーサクセス

対して、カスタマーサクセスは、問題を発生させない「攻め」の役割を担います。問題を発生させない、つまりは自社のサービスやプロダクトを通してお客さまは使い方がわからないためにカスタマーサポートに聞いてくるわけですが、そもそもわからない状況を発生させないことがカスタマーサクセスの一つの指名と言えるかもしれません。

サービス提供側もお客様にとっても健全な状態ですから、それを実現させようとするのがカスタマーサクセスの発想です。カスタマーサクセスはプロダクトを顧客の社内に浸透させるための計画・立案であったり、プロダクトが効果を発揮する運用オペレーションの提案だったり、効果を計測するためのKPIの検討や相談相手を務めたりします。ということは、回答が顧客によって異なるものです。

あなたの会社のSaaSプロダクトが成長を続け、カスタマーサクセスの部門が大きくなっていく......そのなかで、従来の「カスタマーサポート」の役割を持つチームを、どのような位置づけで考えるべきなのか。チーム間の連携も含めて、実は多くのマネージャーが悩むポイントの1つとなってきています。

サービス事業者がサブスクリプションモデルへの移行でビジネスの成功を導き出す昨今の流れからすれば、スタートアップのみならず、今後は大企業も含めて起きうる課題といえるでしょう。

まずは、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの本質的な違いを明らかにし、SaaSビジネスを作り上げる上でこの2つの役割をどのように整理していくかを説明します。

テクニカル(カスタマー)サポートとカスタマーサクセスのミッションの違いを策定する

テクニカル(カスタマー)サポートとカスタマーサクセスの違いがわかった上で、それでは次にテクニカルサポートが持つべきミッションについて見ていきましょう。山田さんいわく、現在のSaaSにおけるテクニカルサポートのミッションは「問い合わせを発生させない」と「発生した問い合わせに迅速に対応する」だと考えてると話します。

一見すると、問い合わせを発生させないこととは、「プロダクトないし、カスタマーサクセスの仕事では?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。さらに、その疑問はそのまま、テクニカルサポートのSaaS事業内での位置づけの議論へ発展します。

テクニカルサポートをプロダクトの一部に位置づけるのか、あるいはカスタマーサクセスの一部に据えるのかによって、テクニカルサポートのミッションは大きく変わるのです。実はプロダクトが誕生した初期段階でのポジションから紐解くとわかりやすいでしょう。

プロダクトのチームに紐付けるか、カスタマーサクセスに紐づけるか。それぞれメリット・デメリットが存在するので、その点についてはこちらの記事で確認していきましょう。

テクニカルサポートのトレンドを上手く取り入れ、ナレッジベースを構築する

2010年頃からテクニカルサポートのいちチャネルとしてライブチャットが出現しました。ライブチャットは、「わかりにくいヘルプページを徘徊したお客様が、最終的にサポートの電話番号にたどり着いてコールするも、長く待たされて辟易する」といった体験をなくすためにはじまったものです。その後も進化を続け、現在ではそれをロボットの応用で自動化するチャットボットなども存在します。

2020年代のSaaSスタートアップにおいては、ライブチャットを使ってテクニカルサポート業務をはじめることがトレンドとなっています。その理由は3点あります。「低努力の実現」、次に「顧客体験(Customer Experiense)の高さ」、そして「導入のしやすさ」です。

ライブチャットはヘルプやFAQといった「ナレッジベース」にある大量の情報から、欲しい情報にたどり着けないユーザーのために出現したサービスです。前述したような最悪の体験で失望させることなく、顧客の望むものをクイックに提供することを目指した手法であるため、低努力かつ顧客体験が高いのは当然で、多くのSaaSベンダーがこのメリットに目をつけています。

また、サービス提供者側が導入しやすいのもメリットです。対応する人的リソースは必要ですが、提供サービスに明るい人材がいれば、手軽に始められます。それゆえに、アーリーフェーズのSaaSスタートアップでも活用されやすい手法といえるでしょう。

一見するとメリットの多いライブチャットですが、気をつけてほしいのは手段の目的化です。計画性を持ったお客さまサポートが叶いにくい、ナレッジベースが蓄積しにくいなど、長期的な目で見ると、テクニカルサポートにおけるチームの成長を妨げてしまう可能性もあります。

このパートではライブチャットやチャットボットなど、いわゆる今後も登場するトレンドとうまく付き合う方法について、解説しています。

テクニカル(カスタマー)サポートの組織構築について考える

ここまでの話をざっとおさらいすると、テクニカルサポート組織を作る上での大きな意思決定は、テクニカルサポートの組織をどこに位置づけるか、にあります。プロダクトの一部なのか、カスタマーサクセスの一部なのかを決める判断によって、のちの進化が定まるため極めて重要です。あらためてざっくり説明すると、初期段階で「プロダクトの一部」とした場合は、ナレッジベースの蓄積は加速するが、顧客体験は低下しやすい。

初期段階で「カスタマーサクセスの一部」とした場合は、早くから顧客体験を向上させることはできるが、ナレッジベースが溜まりにくい。

という傾向になります。この事実を踏まえると、テクニカルサポートの事業における理想的な位置づけは、

カスタマーサクセスの一部(1~3年程度)

→ プロダクトの一部(4~8年程度)

→ カスタマーサクセスの一部(それ以降)

となると考えられます。この期間の裏付けですが、以下のような状況を踏まえて叶えられるのではないでしょうか。

SaaSの初期段階ではテクニカルサポートに割り当てられる人的なリソースが少ないため、カスタマーサクセスがこの役割を同時に担い、かつ顧客体験の向上に努めながらストック収益の最大化に務めるのがベターです。

SaaSの運営が3年も経つと、提供するプロダクト・サービスの顧客も増えているため、ナレッジベースの構築が急務になってきます。このタイミングでテクニカルサポート組織をプロダクトに寄せ、ナレッジベース制作のポリシーやフローを整備し、来たるべき顧客増に備えます。

ナレッジベースの蓄積が加速し、顧客の問い合わせに対する解決スピードや正答率をKPIとすることで、「量を速く捌く」という能力が組織に蓄積されていきます。ただ、この数値の上昇は年々頭打ちになってくるので、こうなるとテクニカルサポートを再びカスタマーサクセスに寄せ、LTV(Life Time Value)の最大化と顧客体験(CX)の向上を組織の新たなミッションに加えます。

こうすることで、マンネリ化した顧客対応と組織運営に新たなスパイスを与えるとともに、SaaSのそもそものミッションに立ち返ることができます。

とはいえ、まだカスタマーサクセス登場以後のテクニカルサポートの立ち位置の変化については事例、ケースが多くはありません。

ここからは山田さんと共に、テクニカルポートの理想型をいかに作るかという点で、彼の考えを覗いてみましょう。